働く上で必ず把握しておかなければならない「労働時間」「年次有給休暇」についてのルール。
労働者を雇い入れる「雇用側」が把握しておくのは当然として、雇われる「労働者」側もルールを守って権利を行使するために、最低限の知識を取得しておく必要があります。
気づかないうちに法律違反になっていたり、実は不当な状況に陥っていないか把握するためにも労働時間管理の基礎について学びましょう。
また、2019年以降は『働き方改革』の施行が随時始まりますので、法律面の変更点にも注意を払いましょう。
1.労働時間管理に関わる言葉の基礎
2.年次有給休暇の付与ルールと取得義務化
3.労働時間と年休取得率の実情
3.1.女性の労働力人口と共働き世帯状況
3.2.年齢別の労働力比率
まとめ
労働時間管理に関する基本的な文言
「労働時間」に関する言葉は、会社の人事や従業員管理的な立場に属する人は確実に把握するのは当然です。また、労働者側も覚えておきましょう。
「法定」「所定」などの言葉がありますが、以下のように理解してください。
- 法定:『労働基準法』に準拠
- 所定:『就業規則』に準拠
労働時間
労働者が使用者の指揮監督下にある時間。実際に作業をしている時間とは限らない。
法定労働時間
1週間で40時間を超えて、また、1日で8時間を超えての労働はNG。
所定労働時間
会社で取り決められた始業から終業時間から休憩時間を除いた労働時間。法定労働時間を超えてはならない。
36協定
『労働基準法36条』に基いた、時間外労働に関連する労使協定。
法定労働時間を超えて労働させる場合は、労組と会社が協定を結んだ上で、労働基準監督署長に届け出が必要。
週:15時間
月:45時間
法定休日
週に1日、または4週間に4日以上の休日を与えなければならない。
所定休日
祝日や創立記念日などを指す。会社によって取り扱いが違うので注意。
割増賃金
労働時間が法定や所定を超える場合や、休日出勤時には以下のような割増賃金の支払いが定められています。
法定休日での労働:35%以上
法定時間外労働が月60時間超:50%以上
年次有給休暇の付与ルールと取得義務
年次有給休暇については、『年5日の年次有給休暇の確実な取得』によくまとめられていますので、資料を参考に説明していきます。
年次有給休暇は、「労働者が企業に請求する」ことで給与をもらいながら休みを取得する権利です。この年次有給休暇には以下のような取得条件があります。
- 雇入れ日から6ヶ月継続雇用されている
- 全労働日の8割以上出勤している
また、年次有給休暇の休暇付与日数のルールは、雇用条件によって大きく違いがあります。
一般労働者(管理監督者や有期雇用労働者も含む)
所定労働日数が少ない人(パートタイム労働者など)
法改正に伴って、パートタイム労働者でも「10日以上の年休休暇付与」がある場合は、「年5日ルール」が適用されるので注意しておきましょう。
【働き方改革】年次有給休暇の「年5日」の取得義務(2019年4月から)
今までは、年次有給休暇(以下、年休)は、取得日数について「使用者義務」はありませんでした。しかし、2019年4月から施行の『働き方改革』により、「年5日以上の取得義務」が取り決められました。
使用者とは「雇用主」に該当しますが、労働者に年休を付与した日から「1年以内に5日」取得させなければいけません。
また、以下のような義務づけも行われるため、年休取得に関しては追い風となるでしょう。
- 就業規則に「年休時季指定の方法」を記入
- 3年間の年休管理簿保管
年休の「時季指定」は使用者側が労働者に行うのですが、既に5日以上の年休を取得している労働者には「時季指定」はできません。
年次有給休暇の使用者罰則規定
2019年4月から有給休暇の取り決めが厳しくなることを受け、罰則も強化されます。
- 年5日の年休を取得させなかった場合
- 30万円以下の罰金
- 年休の時季指定を行う場合の就業規則記載がない場合
- 30万円以下の罰金
- 労働者が請求する時期に所定の年休を与えなかった場合
- 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
これらの罰則は、「対象の労働者1人につき1罪」となります。原則的には、3人に対して年5日の年休を与えなければ「90万円以下の罰金」となるわけです。
『働き方改革』の3大改革の中小企業への適用は企業規模で違う
2019年4月から施行されている『働き方改革』には、3大改革があります。
- 時間外労働の上限規制:月45時間/年360時間
- 年次有給休暇の時季指定:年5日の確実な取得
- 同一労働・同一賃金:正規雇用者と非勢雇用者の待遇差禁止
これらの改革ですが、中小企業については適用が以下のようになります。
- 時間外労働の上限規制:2020年4月1日から
- 年次有給休暇の時季指定:2019年4月1日から
- 同一労働・同一賃金:2021年4月1日から
とくに大きな改革である「同一賃金・同一労働」は、2021年からの施行となります。
労働時間と有給休暇取得率の状況
労働者の労働時間や年休取得率の現状については、『平成30年版労働経済の分析』で確認することができます。該当の統計データを参考に労働者の実情を確認してみましょう。
労働時間のトレンド
労働者全体(正社員、派遣、パートなど全て)の月間総実労働時間は引き続き減少傾向となっています。所定外勤務時間はほぼ変動がないことから、所定内労働時間の減少の影響が大きいと考えられます。
引用元: 『平成30年版労働経済の分析』:P46
しかし、一般労働者の総実労働時間に着目してみると、2013年以降はほぼ横ばいで推移しており、労働時間に変化はありません。また、就業時間が週60時間以上の残業は男性に多いことがわかります。
引用元: 『平成30年版労働経済の分析』:P48
一方、パートタイム勤務者の総実労働時間に着目してみると、顕著に減少していることがわかります。ただ、就業時間を増やして欲しい就労者数が多く、就労者の希望と現実がかけ離れている状態になっていると考えられます。
引用元: 『平成30年版労働経済の分析』:P50
有給休暇の取得率
年自由休暇の取得状況については、産業別で「有給取得率(=取得日数計/付与日数計×100[%])」データがまとめられています。
引用元: 『平成30年版労働経済の分析』:P50
産業計では、2017年が49.4%と若干取得率は上昇しています。年休取得率最下位の「宿泊、飲食サービス業(32.8%)」と取得率トップの「情報通信業(58.9%)」では2倍近い開きがあります。
「宿泊、飲食サービス業」は、変則的な勤務が多く人手不足感も高い(『平成30年版労働経済の分析』P35参照)ことが計画的な休みを取得し難い原因の一旦と考えられます。
前述の通り、「年5日以上の年休取得義務」が施行されましたので、次年度調査では取得水準は全体的に上がるのは確実です。ただ、産業による有給取得率差が縮まるかどうかが注目点です。
まとめ
「働き方改革」の施行もあって、とくに労働時間や年次有給休暇取得に関する規制は厳しくなってきています。
労働者側としても、こういった社会の変化を受け止めた上で、どう対応していくかを考えていく必要もあります。
自分の労働環境と照らし合わせた上で、改善できることは積極的に受け入れと活用を行いましょう。
逆に改悪になりかねないものについては労働組合と相談するなど、一緒に会社の”あり様”を改善する方向性を探ることも労働者側には必要なことです。