「有給休暇が取れない」と諦める前に!年休の取得・消化率を上げる方法

会社で働く人たちにとって、土日や特定休日以外に重要な休む権利が「有給休暇」です。

あなたは有給休暇を満足に取得できていない状況にありませんか? もしかしたら、休日出勤の代休すら取れないなんていうほぼ休みのない生活を送っているかもしれません。

ここでは、有給休暇という制度の詳細はもちろん、少しでも取得日数を増やすための対処法を紹介します。




企業が有給休暇を断るのは違法なのか?

「仕事には全力で取り組みつつ、プライベートの時間をしっかり楽しむ!」これこそが社会人のあるべき姿です。

しかし、せっかくメリハリをつけるために有給休暇を申請しても断られてしまうと、仕事へのモチベーションがどんどん減ってしまいますよね?

有給休暇の申請を断ることは基本的には違法です。社会人には有給休暇を取得する権利があるからです。理由もなく有給の申請を断られることが続く場合は、その会社はブラック企業の可能性もあるかもしれません。

企業側にも有給休暇取得を断れる権利がある

ただし、有給を断わる権利が会社側にもあります。それが「時季変更権」です。簡単に言うと「会社にとって、その一日が非常に大切な日」であるケースです。

有給は個人の権利ではありますが、会社にとって不可欠な日の有給申請は断られる可能性がありますし、会社から見れば有給申請を断る権利は保証されているというわけです。

有給休暇は勝手に取得せずに上司に報告しよう

有給を申請したい時は、まず直属の上司や先輩に有給の希望日を伝えてその間の業務をどのように進行するかを伝えましょう。自分がいない間に業務が滞ってしまうことがないように手配をしてこそ、しっかりした社会人です。

リフレッシュするための有給は大切ですが、その取り方には配慮が必要。仕事の流れをしっかりと見極め、他の人に迷惑をかけない有給の取り方を実践してください。




有給休暇の取得については国もフォローをしている

有給休暇は働く人の権利であるため取得状況が悪いような企業が増えてくると国としても好ましくはありません。そのため、有給休暇の取得状況については国もフォローを進めています。

厚生労働省からは『有給休暇ハンドブック』が発行されており、誰でも閲覧することができるようになっています。

有給休暇ハンドブック

こちらを参考に、有給休暇制度についておさらいしてみましょう。

年次有給休暇とは?

有給休暇は企業に入社した社員のうち「入社後6ヶ月間継続勤務し、出社率が8割以上」の労働者に対して「最低10日」の付与が定められています。付与体系については下記表に示します。

有給取得権利

「パートタイム」や「未成年者」に関しても休暇日数についての記載がありますので、該当する人は別途確認してみましょう。

『働き方改革』の施行にも伴って、年10日以上の有給休暇を付与された労働者は、「その年のうちに有給休暇を5日取得する」義務があります。

また、政府は、令和2年中までに、企業の年休取得率70%達成を目標として掲げています。

不利益取扱いの禁止

年休取得の流れについても『有給休暇ハンドブック』には記載されています。

参考抜粋『有給休暇ハンドブック』P.4

この中では「賞与計算の際に有給休暇を欠勤扱いにしない」「年休取得申請を不当に抑制しない」といった、当たり前に見えるような事例に関しても「禁止するように」といった記載があります。




会社も独自に「年休休暇取得」のルールを設けている

有給休暇の消化方法に関しては、各社様々な取り組みを行なっています。あなたが勤めている会社でも「就業規則」や「独自の業務規定ページ」などで記載されていることがありますので確認しておきましょう。

多くの会社が、厚生労働省の例を参考に休暇取得ルールを設けていますので、優先的に取得を促されることになります。

  • 夏季、年末年始などに有給休暇をつなげて連休にする
  • 飛び石連休に有給を入れて連休期間を長くする
  • 「アニバーサリー休暇制度」として本人や子供の誕生日に有給を入れる
  • 業務閑散期に有給休暇を取得するように促す

「こういった日には、上司もいなくて仕事もよく進む」と言って休まない人もいますが、そんな考えではいつまでも有給休暇は消化できません。

本人は満足かもしれませんが、会社はもちろん有給休暇の消化率の目標などを設定している他のメンバーに迷惑が掛かります。「会社のみんなが有給で休むときは自分も休む」という考えを徹底しましょう。

「休みがないほど忙しい!」というのもわかりますが、「休みを計画的に取得する」というのも「業務遂行能力」の一つです。そのために、普段から業務計画をしっかり建てておく必要があります。

「ブラック企業」とされる会社に勤めていると、上記のような年休設定が明記されていないケースもあります。そういった場合には【有給休暇をうまく取得できるようになるためには?】以降のコンテンツをご参考ください。




有給休暇をうまく取得できない人の特徴

年休取れない
有給休暇は社会人の権利の一つですが、有給を「うまく取得できない人」もいます。その人たちにはどんな特徴があるのでしょうか?

【1】気の弱い人

有給を取得したいのに言い出せずに我慢し続けてしまう人がいます。その中でも多いのが「気の弱い人」でしょう。こういったタイプの人は年休申請はもちろん、それ以外の申請に関しても遠慮をしてしまいます。

しかし、はっきりいって遠慮をする必要はありません。「そうは言ってもできない…」という人もいるかもしれませんが、一度でもやってみると案外吹っ切れるものです。

気の弱い人は、行動のその先に起こる結果をネガティブに考える傾向にあります。ただ、意外と絶望的にネガティブな結果は起こりません。まずは、小さなことからでもいいので「自分の意見を通す」経験を積むことで、徐々に耐性をつけていくようにしましょう。

【2】仕事の流れが読めていない人

このタイプは有給申請のタイミングが悪く上司に申請を断られてしまいます。簡単にいうと、空気が読めていないのです。

仕事には、業界や業種によって「繁忙期」があります。このタイプの人は、仕事の流れやタイミングをきちんと読めておらず、会社の繁忙期やここぞという時に有給を申請してしまうので、結果として有給休暇の取得を拒否されてしまうばかりか「空気読めないやつだ!」というレッテルを貼られてしまいます。

有給休暇の申請に限らず、空気を読めない人は様々な局面で行動として出ています。あまりマイナスなイメージを持たれないように、事前に周囲を確認するなど行動の前に一呼吸置きましょう。

【3】仕事を頑張りすぎてしまう人

有給はすべての社会人に与えられている権利ですが、一部の人は有給を申請して業務を休んでしまうことへの不安があります。

そんな時は、有給中の業務をしっかりと事前に調整することをおすすめします。こうしておけば、自分が有給休暇中に不安な思いをすることもありません。会社の仕事に全力を注ぐことも大切ですが、有給を取ってリフレッシュしたり、家族や仲間との時間を楽しんだりすることも重要です。

事前に業務計画をしっかりと建てて、それを示すことができないと頑張りもうまく評価されません。ここは当人の意識が必要です。

あなたも有給の取り方についてもう一度考えてみてください。うまく有給休暇を使えてこその「社会人」です。




有給休暇をうまく取得できるようになるためには?

有給消化する
有給休暇を取得しにくい会社には同じような理由があります。

  • 上司が厳しい人で、なかなか認めてくれない
  • 仕事が多すぎて取得する余裕がない
  • 周囲の人がほとんど有給休暇を取らない
  • 会社自体が有給休暇に対する考えが薄い

往々にして「職場環境」による理由が多いのですが、本人が仕事を頑張り過ぎたり有給申請ができないということもあります。以下の2つの面から、有給休暇を取得する方法を紹介します。

  • どのようにして有給申請をすればいいのか?
  • 会社の体制を変えるにはどうすればいいのか?

【1】就業規則を確認し「年休取得ルール」を確認する

何度も言うように、有給休暇は”社会人に保証されている権利”の一つです。

用事がある時や休暇がほしい時は上長に有給を申請することができます。しかし、一部の会社では有給を申請してもあれこれと理由をつけて、有給の取得を拒否される場合があります。
あまりにも有給の申請を拒否されて「心も身体も疲れ切ってしまいそう…」という時は、各社にある「就業規則」をまず確認しましょう。

就業規則とは10名以上の従業員が所属する企業にて作成が推奨されており、働き方についての規定が記されています。就業規則には、必ず有給休暇についての項目も記載されてあるはずです(無いところは危険です…)。
有給の付与日数ルールや、勤務年数による有給申請の条件を確認し、自分が条件を満たしているかを確認しましょう。

以下のような休暇申請であれば、就業規則を引き合いに出して有給の取得を認めてもらいましょう。

  • 有給申請に関する会社のルールをクリアしている
  • 業務の繁忙期などに当てはまらない時期

「うちには有給なんてないから!」というような会社は、長く勤め続けていくことは難しい会社ですし、就職後にそのような労働環境だと判明した場合も転職を考えるべきです。

会社の就業規則を確認し、会社に迷惑をかけない適切な日を選んで有給申請をしましょう。




【2】断られたら代替日を確認する

有給を申請しても断られる場合は、休暇を受理してもらえる「代替日」を確認することが重要です。上司が有給申請を拒否した日は、会社にとって重要な日であったり、従業員のシフト調整のためにあなたが必ず会社にいるべき日であったりするかもしれません。

会社のスケジュールや納期、シフトなどを改めて見直せば“この日なら、有給の申請を受理してもらえる”という可能性が高い代替日があるはずです。自分の判断でこの代替日を決めることが難しい場合は、同僚や上司に相談してみましょう。

有給休暇は権利とはいえ、会社の業務に影響を与えないように配慮をすることも大切です。日頃からきちんと周囲の同僚・上司とコミュニケーションをしておくといった気配り一つで、有給申請をしやすい環境を作り上げることができます。

【3】日々の仕事のスケジュールを「報・連・相」する

有給休暇を取りたくても取れない大きな理由の一つに「仕事が多すぎる」というものがあります。仕事量を自分で調整することは難しいかもしれませんが、仕事の納期や進め方は事前に調整することができます。業務を行う際には、当然ゴールまでの日取りを事前に設定しておくべきです。

また、スケジュールは上司に共有しないと意味がありません。あなたの仕事の状況は、予定と進捗度を伝えることで、はじめて上司は把握することができます。残念ながら、どんなに仕事を頑張っても成果が目に見えなければ、上司にとっては進んでいるかどうかはわからないのです。

ですので、仕事を始める時点の予定はもちろん、進み具合についても直属上長には伝えるようにしましょう。その際に、自分の有給休暇の予定も合わせて伝えることがベストです。仕事の基本中の基本でありながら、多くの人が中々実行できていない「報・連・相(ホウ・レン・ソウ)」。有給休暇を勝ち取るためにも、小まめな報告を意識しましょう。

【4】病欠を活用する

それなりに勇気がいる方法ではありますが「病欠にする」という方法もあります。ただ、あまりにも「病気による休み」が続くようだと会社からも詮索が入りますので、この方法はたまにしか使うことはできません。

ただ、全く有給休暇も取れずに精神的に追い詰められていくと、将来的なうつ病の発症や離職の原因ともなります。会社としても損失は大きいわけですので、1,2日程度の病欠であなたを問い詰めたりすることは稀です。

自分の精神バランスを整えるためにも、たまには有給休暇を使ったズル休みをしてみましょう。ただし、元気な姿を会社の人に見られないように気をつけましょう。あまり外には出歩かないか遠くに行く用事があるときのみこの方法は使いましょう。

欠勤が多いと解雇対象になる?

「有給休暇」は、「欠勤」ではなく定時時間まで働いたという取り扱いになります。

それに対して「欠勤」は、金融関係で言うところの「債務不履行」と同じであり、果たすべきを果たしていないと判断されます。したがって、あまりにも「欠勤」が続くようでは、会社としても懲戒などの対応を取らざるを得ません。

懲戒で最も重い「解雇」をするとしても、仕事に対する態度を改めるために「注意・指導を行った」という実績が必要になるので、いきなり「お前はクビだ!」ということには日本の企業ではあり得ません。また、「解雇」まで進む事は少なく「けん責、減給」といった対応をとられるケースが多くなります。

けん責:始末書を書かせたり、制裁金を支払わせる
減給:給料を減らす

いずれにせよ「欠勤」を続けることはメリットがありません。転職を考えているとしても、現在の会社での「悪い履歴」は転職希望先の会社に伝わってしまうものです。あまり一時の欲求や気分にとらわれずに行動をするようにしましょう。




【5】労働組合に相談する

世の中には“ブラック企業”と呼ばれる労働環境が整っていない会社があります。そんな会社の特徴の一つが「有給の取得を拒否されること」です。もちろん、会社の繁忙期での申請や、あまりにも頻繁な有給申請など働く側に問題がある場合もあります。

ただ、会社の都合によって有給の申請を頻繁に断られたり、「うちには有給はない」などと言われたりする場合は、労働組合に相談することを検討してみましょう。
労働組合とは会社単位、あるいは業界や職種単位などで組織される組合のことで、労働環境の改善など従業員の要求を会社や組織に訴えるといった役割を果たしています。

満足のいく有給が取れていない場合は、あなただけでなく多くの従業員が同じ環境に置かれている可能性もあります。ですので、個人で行動をするよりも労働組合のような大きな組織でアクションを起こす方が問題が解決しやすくなります。

会社に労働組合があるかどうかが分からない場合は、先輩に聞いてみたり会社内の掲示板などをチェックしてみましょう。一部の労働組合では定期的に組合誌を配布していることもあり、そのページで年休の取得について解説をしていることもあります。

また、電話相談などを行っている労働組合もあります。

【6】労働基準監督署に報告する

有給取得については上司や労働組合に相談するなどの対処法が考えられますが、あなたはそういったことができるような環境にありますか?

以下のような理由で、あなたが相談したくてもそういった状況ではないこともあるでしょう。

  • 上司こそが一番の害悪で相談なんてとてもできない
  • 他の人に話したらどこで上司に漏れるか知れたものではない
  • 労働組合はあてにならない
  • 労働組合自体がそもそも結成されていない

「他の人に相談する」という対処の中でも、最終手段とも言える対処法が労働基準監督署に報告をするという方法です。「労働基準監督署」というのは、日本にある会社が労働基準に基づいて従業員に対して適切な措置を施しているかを監督する役所のことで、会社の所在地ごとに必ず存在しています。

有給が取れないことが恒常化している、あるいは自分自身で会社に訴えたが、適切に状況が改善されない場合があるでしょう。そういった際には、労働基準監督署に相談をして会社の現状を報告することで、役所から会社へ注意や指示が与えられることになります。




証拠になるような情報は集めておく

この際、労働基準監督署の人にも分かりやすいように「タイムカード」や「シフト表」など、自分や社内の従業員の労働環境が分かるような資料を用意しておくとさらに良いでしょう。もちろん、労働基準監督署に相談に行く場合に費用は必要ありません。

労働基準監督署の開いている時間に足を運ぶのが難しい場合、一部の労働基準監督署では夜間や土日向けの相談ダイヤルを設けているところも。忙しい人こそ有給の申請がしづらいということもありますので、こういったサービスをうまく活用したいですね。

労働基準局への報告に際しては、会社は当然嫌いますし、もし通報者が特定された場合はいい顔はされないでしょう。ある意味、どこにも相談ができない時の”最終手段”といった方法になります。

ただ、どんなに身内に相談したり改善に取り組んでみても、「有給休暇の拒否」や「残業の過度な強要」というものは一朝一夕では改善できません。ですので、影響力の強い組織を活用するというのも重要な方法なのです。

労働基準局に相談したら自分の身は守られるの?

相談を行うとしても「実際に通報した人がどのようになるのか?」ということはとても気になるところですね。

基本的には、申告をしたことを理由として「解雇や業務上不利益」といった取り扱いを行うことは禁止されています。(労基法104条2項)

ただ、「申告」を行う場合には住所や氏名等の提出が求められるため、それを理由に取りやめる人が多いのも事実です。労働基準局も日々相談を受けており、「監査」といった厳しい対応をするには正確な情報が必要となりますので仕方がないことではあります。

労基としても調査対象となった会社に個人名を漏らすということはしていませんので過度な心配は要らないでしょう。個人として労基に持ちかけるほどの勇気が湧かない場合は、一緒に行動してくれる仲間を募るか、個人で入れる労働組合に加入してみるという手もあります。

まとめ:有給休暇の取得は積極的に行おう

有給休暇は会社で長く働くためのメリハリをつける意味でも非常に重要な休暇制度です。しかし、それがあまりにも認められないようではあなたの気分も沈み込んでいくばかりでしょう。

世の中には、有給が取得しやすい会社もあれば「有給が存在しているのか?」というくらい取得できない会社もあります。会社は個人の意見のみで変えていくことは不可能ですので、他の仲間の意見を募ったり、組合等を活用して自分たちで変えていくというスタンスを持ちましょう。

また、そういった行動を起こせないようなら他の仕事を探してみるのも一つの手です。自己犠牲精神にとらわれて奴隷のように従うのだけはやめましょう。