2018年の日本の労働市場の動向まとめ【参考:『平成30年版労働経済の分析』】

2019年の現在でも労働市場では引き続き「売り手市場」と言われ、景気も2019年の1-3月期のGDPは2期連続のプラス成長となっています。

そのような中、失業率や求人数などといった雇用情勢についてはどのような状況なのか? 『平成30年版労働経済の分析』のデータを元に雇用に関する状況をまとめました。

統計データの開示タイミング上、平成30年版とはなりますが、労働市場の状況確認に役に立てば幸いです。







労働市場に関する用語

労働市場の統計情報を紹介する前に、各用語について説明します。雇用はもちろん、景気にも関わる指標ですのでこれを期に覚えておきましょう。

雇用に関わる景気動向指数

その数値が景気動向を指し示す雇用系の指標として、以下のような用語があります。

景気動向にも関わる指標

完全失業率【遅行系列】:労働力人口に占める完全失業者数の割合
新規求人倍率【先行系列】:(当該月に新たに受けつけた)求人数/求職者数
有効求人倍率【一致系列】:月間有効求人数/月間有効求職者数
注意「有効求人倍率」はハローワークの求人数のみで民間の職業案内の求人は含みません

「遅行系列」は景気の状況に遅れて変化する指標で、「一致系列」は景気とほぼ同様の動きをします。「先行系列」は景気を先取りした動きを示すため、「先行系列」の指標が良ければ将来的に景気が上向きになる可能性があります。




雇用に関する現状

それでは、『平成30年版労働経済の分析』をもとに、日本の雇用状況に関する状況を紹介していきます。「女性」「若者」「高齢者」などに重点的に着目したデータは別記事で紹介します。

2017年の労働力人口

2018年の調査結果では2017年に比べて非労働力人口が減少し、女性を中心に労働参加が進んできています。それに伴い、男女ともに正規雇用労働者が大きく増加してきています。

また、不本意非正規雇用労働者の割合は2017年と同様に引き続き低下しており、2018年は「13.1パーセント」となっています。

非正規雇用を選ぶ理由として、男女ともに「自分の都合の良い時間に働きたいから」が2018年は増加しており、仕事に対する価値観の変化を感じ取ることができます。




完全失業率と有効求人倍率の推移

景気と連動する景気動向指数としても有名な「完全失業率」「有効求人倍率」の状況について紹介します。

失業数などの指標は以下の通りで、2017年と比べていずれも改善傾向にあります。

完全失業率:2.5パーセント(△0.3
新規求人倍率:2.41倍(△0.28
有効求人倍率:1.59倍(△0.14
正社員の有効求人倍率:1倍超えを達成

各指標がいずれも伸びていることから、2017年に比べて2018年は景気自体が上向きであったという結果となっています。




完全失業率の年齢別の比較

完全失業率は、年代別に見ても2017年よりも改善傾向にあります。ここでは、年代別ではどの年代が完全失業率が高いのか比較してみましょう。

完全失業率は労働力人口の中で働いていない人の割合ですが、10-30代の若年層の完全失業率が高いことがわかります。

15-24歳は「既卒未就職者」の割合を示しているため極端に高く見えますが、30代中盤くらいまでは完全失業率が男女ともに3.5パーセントを超えています。10-30代の若手層の就職支援が今後も尚一層重要な課題であることが見て取れます。

また、見逃してはいけないのが「55-64歳」の完全失業率です。現時点では定年による退職を含みますが、今後は定年引き上げも起こるため高齢者層の雇用も引き続き労働市場での大きな課題です。

地域ブロック別の雇用情勢比較

全国の地域ブロック別に「完全失業率」と「有効求人倍率」を比較してみましょう。

注意沖縄の有効求人倍率は九州に含まれているため、グラフ上では数値は記載していません。

完全失業率に関しては概ね3パーセントと2.5パーセント程度で二極化しており、沖縄が3.8パーセントと群を抜いていることがわかります。
有効求人倍率はいずれの地域も1倍を超えてはいます。ただ、完全失業率との乖離が大きい「北海道」「沖縄」は、雇用情勢が他ブロックに比べて良くない状況と考えられます。
就職に際して求人の取り合いとなる可能性が他のブロックより高くなってしまうからです。

求人・求職に関する動向

次に、求人数や求職者数に関する具体的な数値を見ていきましょう。

求人数に関しては、2017年から2018年の1年間で以下のように増加傾向にあります。

有効求人数:273.4万人(△9.7万人
新規求人数:98.7万人(△5.4万人

これは、「仕事あまり」の状態が継続していることを示しています。
逆に求職者数に関しては、「有効求職者数」「新規求職申込数」ともに減少傾向にあります。

有効求職者数:172.0万人(▲9.6万人
新規求職申込数:41.0万人(▲2.6万人

完全失業率も減少傾向にあるため、プラスの意味で考えると労働人口に占める就業者が増加したためと考えることができます。

マイナス要素があるとすれば、完全失業者の中で求職活動を行なっている人が減っているという可能性も考えられます。




産業別にみた新規求人数の推移

景気の動向に大きく関わる「新規求人数」について、2017年で伸びている産業について確認してみましょう。

新規求人数については、パートタイム雇用が減少する一方で正社員雇用は2016年比で増加しています。主に以下の産業において、求人数が増加傾向にあります。

  • 製造業
  • 運輸業、郵便業
  • 建設業

製造業の中でも、「専門的・技術的職業」「生産工程の職業」は特に正社員の新規求人数が増加しています。

「医療、福祉」系については、正社員もパートも2014年から変わらず高い新規求人数を維持しており、就職や転職のチャンスは高いと考えられるでしょう。

まとめ

2018年の調査結果ではありますが、『厚生労働省:労働経済の分析』の調査結果では、景気動向指数に関わる「失業率」「求人数」に関する数値はいずれも改善傾向を維持しています。

就職や転職に関しては、地域や産業による差はありますが依然として全体的に追い風ではあります。
ただ、企業の採用人数受け入れキャパは限られています。常に自分以外の求職者たちもあなたが望む企業へ応募をしているかもしれないという意識は持つようにしましょう。