転職成功者と失敗者の違いは?転職エージェントへの質問で見えること

関連記事「採用のための転職エージェントの裏事情【元コンサルタント一問一答】」の続編として、転職を成功させるために行った数々の質問への回答の続きをお伝えします。

今回は、転職を成功させた人とうまくいかなかった人の事例や、転職成功のためのアドバイスをメインとしてお伝えします。
【お詫び】協力いただいた元エージェントの方や転職事例の方の特定を避けるため、一部記載を変更させていただいております。




転職活動がうまく成功した人の特徴は?

質問1
ご自身が紹介されてきた中で、転職活動がうまくいった事例を、2例ほど教えていただけないでしょうか? (活動の流れの中でどういった点が、どのように良かったのかなど)

自分を見失わなかった求職者の例

まずお一人目ですが、30代男性営業職の方で、深夜に及ぶ残業を解消したい、家族との時間を持ちたいという理由で転職を希望している方がいました。この方は1社経験で経歴が綺麗で、お人柄も社交的で謙虚な良い人でしたので、複数企業で選考が進み、内定を2社獲得していました。

1社は私が紹介した、関西中堅の安定で有名な企業。もう1社は外資系企業で、年収が現職と比較して100万以上上がるオファーでした。ただ「残業時間は現状と変わらない+実力主義で離職率も高い」企業でした。

私が紹介した方は、現職と比較して入口の年収は50万ほどダウンするオファーでしたが残業は少なく、年功序列で安定して昇給していく企業でした。人間誰でもそれだけ金額に差があるオファーが出てしまうと迷うものです。

ただこの方は冷静に当初の転職理由に立ち返り、私が紹介した安定企業のほうを選んでくれました。数年後、企業人事からその方が非常に活躍してくれているという話を聞きました。

転職活動をしていると、色々な魅力的な話が舞い込んできますが、自分が何をしたかったのか、なぜ転職したいのかを見失わなかったことがポイントだと思います。

エージェントとの信頼関係を築いた人の例

お二人目は、40代施工管理の方で、大手メーカーグループ施工会社に転職した方の事例です。

経験は一貫して施工管理でしたが、社数が平均よりもかなり多く普通であれば上記規模の企業に転職は不可能と思われた方でした。ただこの方は、前回の転職時から弊社をご利用いただいており長期でエージェントと付き合っている方で、私以外にも支店の複数のコンサルタントと面識がある方でした。

人柄は社交的且つ素直でレスポンスも早く、関わったほとんどのコンサルタントが「この人の為に何とかしたい」と思っていました。転職のことだけではなく、家庭事情などの周辺情報まで惜しげなく教えてくれる方で、決定した大手メーカーグループ施工会社は私の担当企業でしたが、私もこの方のために何とかできることをやりたい、と思っていた一人でしたので、経験社数が多くとも「何とか一度会ってから判断してほしい」とクライアントにプッシュし、面接にこぎつけました。

上記のような人柄ですから、面接してしまえばクライアントの評価も抜群で「是非入社してほしい人材だ」と高い評価で内定をいただくことができました。

この方のよかった点は、二つです。

【1】エージェントと信頼関係を築き、よい転職先を紹介してもらえたこと
【2】面接でのパフォーマンス

40代の男性が、まるで就活中の学生のように「本日はよろしくお願いします!!」と深々と頭を下げ満面の笑みを面接官に向けるなど、なかなか出来ることではないですよね。勿論経験というベースがあった上での話ですが、人柄が勝ち取ったポジションといえます。

転職活動が失敗する人の特徴

質問2
ご自身が紹介してきた中で、転職活動がうまくいかなかった事例を、2例ほど教えていただけないでしょうか?(活動の流れの中でどういった点が、どのように良くなかったのかなど)
うまくいかなかった例も数多くありますが、失敗例というよりは「どうしたら転職活動がうまくいかないのか?」という点で回答させていただきます。そのために、私が考える「転職活動がうまくいく」ということの前提からご説明致します。

転職活動がうまくいく=希望が叶う会社に入社できる

転職活動者の「希望」は、下記以外にも挙げればきりがないくらい様々なものがあります。

給与が上がる
大手企業に入社する
残業が減る
休日が増える
職種を変える
地元に帰省する

しかし、残念ながら希望が全て叶う転職先は基本的にはありません。転職はよく結婚に例えられますが、例えば私が「嵐の櫻井翔と結婚したい」と言ってもできるはずがないですよね。

私がどれだけ櫻井翔を好きでも、向こうが私を好きになることはないです。奇跡が起これば可能性はゼロではないのかもしれませんが、大抵の方が仰る希望の転職先はこの「櫻井翔」と同じです。

そんな転職はありえないんです。なので、転職活動がうまくいく方は自分の希望を整理して、軸・コアを理解し妥協できる点、できない点を分析できている方です。

本当に必要な転職希望を抽出するコツ

私がよくアドバイスしていたのは、希望を10個列挙し、そのうちどうしても譲れない条件を最大3つ選んでください。その絶対条件が適っていれば、それ以上の転職先はありませんよ。ということです。

最後まで櫻井翔を追い求めた方で、転職が成功した方は見たことがありません。

例えば、下記のような方。

【1】年収を上げたい、残業も減らしたい、勤務地は駅徒歩5分以内、住宅手当がある…(絶対条件が多い)
【2】20代有名大学卒、大手メーカー1社経験→コンサル会社にいきたい

それぞれの希望の矛盾点を認識する

【1】は、典型的ですがよくある例です。例えばお給料とは、会社に貢献し利益をもたらした対価として支払われるものですから内定先から提示される年収は、「これくらいの成果を出してくれるだろう」という候補者の見積もり金額になります。

今より高い給与をもらい、且つ勤務時間を減らすということは、今よりも短時間で、今よりも高い成果を出さなければなりません。それだけのスキルを持っていなければならないし、且つそれを面接内でアピールし面接官に認められなければならないのです。

その方が現職で不当な処遇で働かされている、というのであれば別ですが、条件だけで転職先を選ぶ方は志望動機も弱いし、入社に結びつかないことが多いです。

未経験職種への転職希望時の注意

【2】は、何となくいけそうな気がしますが「本人のスキルを年収で買う」のが中途採用です。この方に、コンサル会社で活かせるスキルがあるでしょうか。言い換えると、コンサル会社から見てこの方を採用するメリットがあるでしょうか。

未経験なら、変に別の会社のマインドを刷り込まれた中途より、まっさらな新卒を採用して自社のカラーに教育した方が楽ですよね。
せっかくお金を払って中途で採用するのだから、いちから教えなければならない未経験者より同業界経験者を優遇するのは仕方ないです。
憧れだけで自分の分析が出来ていない方も、やはり転職は成功しづらいと思います。

だからといって異業界への転職が絶対に不可能というわけではないですよ。【2】のような転職を成功させる人は、それだけの勉強と努力をしています。例えばMBAを取得したり、休日にビジネススクールに通ってコンサルについて学んだり。

せっかく転職が決まったのに退職できない

また、せっかく採用試験に合格しても、転職において気を付けなければならないポイントの一つが「退職交渉」です。

優秀な人であればあるほど、会社としては辞めてほしくないので、転職先が決まっても、現職に退職を引き留められるケースはよくあります。「給与を上げるから」とか「異動させてあげるから」とか、情に訴えたりなどのやり方があります。その結果、長年お世話になった会社に恩義を感じ、退職交渉をしたけど転職を諦める方もいらっしゃいます。

とはいえ一度は本気で辞めようとした会社です。戻ったとしても元々の退職理由(辞めたい理由)が解消されることはありませんし、解消したとしても、どうしても社内で「一度辞めようとした(裏切った)奴だ」というレッテルがついてしまいます。そうして居辛くなって、もう一度転職活動を始める方は少なくありません。




転職成功者の採用の決め手は?

質問3
採用企業から聞いた“合格”の決め手をランキング形式で3つほど教えてください。(合格通知を受けた際に、どういった理由が決めてだったのか?)

1.経験がマッチ
2.人柄が良い(頭が良い、明るい、雰囲気が合っている等)
3.面接官と意気投合

転職成功者の不採用の理由は?

質問4
採用企業から聞いた“不合格”の決め手をランキング形式で3つほど教えてください。(不合格通知を受けた際に、どういった理由が決めてだったのか?)

1.求める経験を持っていない
2.人柄が良くない(暗い、上から目線、信用できない等)
3.条件が合わない(希望年収が高い、残業ができない方だから、等)

質問5
面接時に注意すべきポイント3つ教えてください。(ご自分が転職サポート時におすすめしていたことでOKです。)
3つに絞れませんでしたので、全て書きます。

はきはき明るく元気よく、相手の目を見て、いつもより背筋を伸ばして

面接は第一印象で8割決まるとも言われます。

年収・休日・残業時間など条件面の話をしない

条件面の話題で、候補者が好印象に映ることは絶対にありません。必要なことはエージェントに確認してもらってください。

退職理由は作りこむ

本音を全て話してはいけません。企業が転職希望者に心配するのは「うちもすぐ辞めてしまうのではないか」ということです。

面接官に「ああ、それなら辞めても仕方ないな」と思わせる理由を伝えてください。但し、嘘はだめです。面接官はたいていの場合面接に慣れています。嘘ついてもすぐにばれます。

経験は応募先に関係することのみ話す

面接時間は限られています。関係ない経歴・スキルの話はさくっと終わらせましょう。時間がもったいない。

企業HPは必ず見て、質問は必ず5つは用意する

面接ではやる気が問われます。人が「好きです」と言われると喜ぶように、企業についてもきちんと調べて疑問をまとめていくと「この人はうちの会社に興味があるんだな」と思ってもらえます。

逆に、質問が一つも出てこなければ「転職できればどこでもいいのかな。うちに興味ないのかな」と思われてしまいます。

緊張してもよい。大切なのは綺麗に話すことではなく、伝えること

採用面接となると格好つけてしまいがちですが、ご自身のPRが伝わらなければ全く意味がありません。背伸びをする努力ではなく、伝える努力をしてください。




面接時に気をつける服装・格好は?

質問6
面接の時に気をつける服装や格好などの、転職エージェント独自の情報はありますか?
特にないと思いますが、服装はスーツで華美なものは避ける。面接でおしゃれする必要は無いのですから、無難なダーク系のスーツに白系のシャツ、派手でないネクタイ、その他無難な小物が良いと思います。

過去、「離職して長いはずなのに時計がやたら派手で大きいものだったので、気になった」という人事担当者がいました。

転職エージェントで受けられる「面接対策」は?

質問7
転職エージェントでは面接対策としてどのようなサービスを実施していましたか?
模擬面接、キャリアの棚卸、あとは面接で話す内容を一緒に考えたり、というものがありました。

模擬面接

文字通り、エージェントが面接官を演じて面接の練習をします。模擬面接用のマニュアル(質問リスト)のようなものがありました。

キャリアの棚卸

ご自身が何をしたいのか、何が強みなのか、どうして転職するのか等を面談内で一緒に整理します。

面接で話す内容を一緒に考える

自分の経歴のどこをプッシュすればいいか分からない、転職理由をどう伝えたらいいか分からない方向けに、適切な伝え方、自己PRの仕方をアドバイスしていました。

転職活動時に多くの人がおろそかにすることは?

質問8
転職活動者の活動の中で「抜けが発生しやすい」ようなポイントは何かありますか?(多くの人がおろそかにするような事や、「これをやればもっと活動がうまくいくのに」といったものでもOKです。)

【1】自己分析

中途の場合、仕事をしながら転職活動を行うことも多いので、しっかり自分を見つめ直すという時間がなかなか取れません。しかし、自分が何をやりたいのか、どういう時にやりがいを感じるのか、自分の売りは何か等を自分自身で把握をすることで活動中に道に迷うことがなくなります。

逆に、それを把握せず何となくふわふわな状態で転職活動を行うので、転職に失敗したり、なかなか決まらなかったりすると思います。

【2】エージェントの使い方

せっかくエージェントを使うのだから、上手く使えばいいのにと感じることがよくありました。我々は確かにサービス業ですが、それでも人間です。

やたら偉そうな求職者や、エージェントをただの業者のように扱う求職者など我々が好感を持てない方を、お世話になっている大切なクライアントに推薦しようと思わないです。

また、情報をなかなか開示してくれない方も、もったいないなあと感じます。あまり自分のことを話したくない気持ちは分からなくはないですが、ご本人の強みとか好み、お人柄等が分からなければ我々もプッシュしようがありません。

転職希望者が特に多い業種は?

質問9
転職希望者が特に多い職種は何でしたか?5つほどお願い致します。
私は全業界のサポートを経験したわけではなく私が知っているのは製造業、不動産、建築、プラント、インフラ、あと小売り少々くらいです。その業界の中でしかお答えが出来ないのですが、登録が多い職種は下記と思います。

営業
生産管理
事務
機械設計
人事

残業が特に多い業種は?

質問10
残業が比較的少ない業種の情報はお持ちでしたら、ご記載いただけないでしょうか?
業種というのは、業界のことでしょうか?

業界ということであれば、メーカー、インフラ系、不動産管理会社などが残業が少ないイメージです。しかし、同じ業界の中でも会社によって違ったり、同じ会社の中でも部署によって違ったりするので一概には言えません。

職種で言うなら、例えば営業職なら、業界によって特徴はあります。不動産やサービス業界は残業が多いイメージですが、メーカー系は比較的少ない傾向にあります。

事務系なら、部門によって違います。経理は月末月初と年末は超多忙、それ以外は残業は少ない。人事は常に忙しいイメージです。

営業事務、技術事務は比較的残業は少ない所が多いかなと思います。技術系なら、施工管理が意外と残業は少ないです。出張は多いですが。