ガントチャート実践!作成例
ここでは、実際にガントチャートを使って、日常のプロジェクトを計画する方法を説明します。「ガントチャート作成方法」で説明したように、ガントチャートでプロジェクト管理を行う流れは以下の通りですので、この流れに沿って作成を行います。
- 目標設定
- タスクの抽出・分解=WBS
- ネットワーク図の作成/クリティカルパス・メソッド
- ガントチャートの作成
- 進捗フォロー
- 終結
今回作成するガントチャートの実施例は「勉強系」のプロジェクトです。
1.勉強系のプロジェクト計画で重要なこと
2.ガントチャート作成事例:資格取得編
2.1.全体スケジュールの作成
2.2.学習スケジュールの作成
3.進捗管理は重要
4.まとめ
「勉強系」プロジェクトの実施にあたって
「資格取得」「TOEIC」「受験」といった「勉強系」のプロジェクトは、以下のような流れを含んでいることから、基本的に同じようなプロジェクトと考えることができます。
- 試験対象を調査する(2回目以降ならば、変更点確認程度でよい)
- 試験等に応募する
- 試験に必要なものを準備する
- 勉強計画を立てる
- 勉強を実施する
- 試験を受ける
特に重要なのが、「《1》試験対象を調査する」になります。WBSの基本的なルールとしてあった、「それらを実施すれば、そのタスクが完了する」ということをベースに考えて調査する必要があります。
ここで調査するべき内容とは、以下のようなものです。
- 試験名
- 受験目的
- 受験資格
- 合格基準
- 試験範囲
- 受験形態
- 受験日
- 受験場所
これらの調査を完了させて、初めて《2》以降のタスクに移れるのはもちろん、肝心の学習の範囲などを決めることができます。
未知なものを始める場合には、まず確実に「調査」を行う必要があります。プロジェクト計画を立てる際にも、まず「何を調べるべきか?」ということに着目しましょう。
プロジェクトを完遂させるのはもちろん、「始める」ためには何が必要なのか?という考えに立ち返ると、いきなり出鼻でくじくことは少なくなります。ここでは「資格試験」について、プロジェクト計画の実施例を紹介します。
「勉強系プロジェクト」はスケジュールを分割すべし!
「資格取得」や「受験」といった、勉強を要するようなプロジェクト計画に関しては、「全体スケジュール」と「学習スケジュール」というように、2つのガントチャートを作成するようにしましょう。
「全体スケジュール」では、時系列で、試験日までにやるべきことを明確化できます。後ほどWBSで挙げますが、試験を受けるまでには、手続き等の準備も必要となってきます。
ついつい頭は「勉強計画」の方に偏ってしまいますが、手続き不備等で受験できなかったら目も当てられません。しっかりと、勉強内容以外のスケジューリングも行いましょう。
「学習スケジュール」に関しては、遅れがそのまま合否に関わるので、特に進捗管理が必要となります。「全体スケジュール」と分割することにより、別途フォローができるようになり、勉強の進捗が遅れていたとしても挽回策に注目できるメリットがあります。
※全体スケジュールには「進捗確認」をマイルストーンで入れることにする。
ガントチャートの実践例:「証券外務員2種」の資格を取得する
今回の事例では「証券外務員2種」という資格を取得するためのプロジェクトについて、ガントチャートを用いてスケジューリングを実施してみましょう。
計画内容は以下の通りです。
目的:「証券外務員2種」の資格取得
試験日:2016年4月1日
メンバー:自分のみ
【1】目標設定
まずは、ガントチャート作成のスタートである目標設定となります。「勉強系」のプロジェクトの目標は明確です。
- 資格に合格する
- 特定の点数に到達する
- 希望の学校に合格する
- 『証券外務員資格【二種】対策問題集』 →勉強用テキスト
- 『証券外務員2種WEB問題集』 →プレテスト用webテキスト
- スケジュールの遅れがあったときに、余裕時間を割り当てられる
- 残った余裕時間で最後の復習時間を設けることができる
-
こういったものであるケースが多く、目標設定は容易に実施可能です。「証券外務員2種」取得プロジェクトの目標設定リストは以下のとおりです。
全体スケジュールの作成
スケジュールはガントチャートで作成することになりますが、その手順を説明していきます。
【2】タスクの抽出「WBS」
前述のように、「勉強系プロジェクト」の場合は、2つのスケジュールを立てることをお勧めしていますので、「WBS」でも2つのスケジュールに沿ったタスクを抽出する必要が出てきます。
大体の勉強系のプロジェクトに対して、「全体スケジュール」において下記のようなタスクが活用できるでしょう。
1.受験資格の調査
前述のように、まずは「調査」のタスクの優先順位が高くなります。
ここでは、調査内容をリスト化することで、調査内容も明確化することができ、類似プロジェクト実施時も、スムーズにスタートできます。
2.受験応募
応募をすることで、受験資格が確定するため、必須のタスクとなります。
3.勉強内容決定
「調査」によって、「試験の範囲」がわかれば、実際にどのような教材で学習を行うかというフェーズに移行できます。
ここでは、実際に勉強計画を立てることになりますが、詳細な勉強計画は「学習スケジュール」の方で、別途作成するようにしましょう。
4.勉強実施
学習スケジュールをもとに、勉強を実施するタスクとなります。
5.プレテスト
受験系のタスクの場合、勉強と同時に「予備テスト」を実施する必要があります。
これによって、自分が弱いところの復習なども可能になりますし、何よりも、プレテストで合格基準に行かないようでは本番の合格も厳しいでしょう。
このタスクは必ず入れるようにしましょう。
6.進捗管理
学習計画は予定通り進んでいるのかをチェックする日を決めるのも重要です。勉強系の場合は、遅れがそのまま合否に直結するため「最低でも週に1回」は進捗管理を実施するようにしましょう。
マイルストーンの位置付けとし、タスクとして別途組み込むことはしません。
7.受験準備
受験時に必要な準備を行うタスクです。移動や宿泊、特別な提出書類があるケースなどもありますので、漏れてはいけないタスクになります。
8.受験実施
受験実施日に該当のタスクを設置しましょう。それによって、ガントチャート内でゴールを明確化することができます。
作成した「全体スケジュール」用の「WBS」を下記に示します。
「レベル1」の項目が、しっかりと時系列に並んでいるかどうかを確認しておきましょう。
「タスク400:勉強実施」と「タスク500:プレテスト」については、「学習スケジュール」の「WBS」で作業時間を明確化するようにします。
【3】ネットワーク図の作成
「WBS」で確認した先行作業を元に、ネットワーク図を作成します。
注意して欲しいのは、「タスク400」「タスク500」です。これらはまとめて学習スケジュールになるため、一つのタスクとしてまとめて考えるようにしましょう。
「WBS」の表記の際にはわかりやすくするために、敢えて分けて書きましたが、一つにまとめて「タスク○○:学習実施」という表記でも問題ありません。また、ネットワーク図を作成することで、勉強に費やすことのできる時間の最大値を算出することができます。
(2月1日〜4月1日までの日数)ー(学習タスク以外の総期間)=51
これらを反映して、「WBS」のシートに修正を反映しましょう。
では、「往路・復路計算」でフロート等の算出を行います。
「勉強系プロジェクト」のクリティカルパスは、言うまでもなく「学習系タスク」が入っているパスラインになります。
ですので、「学習スケジュール」を別途立てて、進捗をフォローしていく必要があるわけです。
【4】ガントチャートの作成
【2】WBSの構築〜【3】ネットワーク図/CPMから作成したガントチャートが以下になります。
「勉強系プロジェクト」の場合は、最初の準備段階のタスクが遅れるほど勉強の実施期間が短くなってしまいます。そのため「勉強実施タスク」に繋がるクリティカルタスクに関しては特に注力しましょう。
勉強をするための教材や方針が決まらないとズルズルとやる気が落ちていくというのは多くの人が経験していることでしょう。全体の中でも「タスク500:受験準備」のみが、フロートもかなりあるため、特にどの期間に設定しても大きな影響は無いと考えられます。
「🔻」のマイルストーンは進捗管理の日を表しています。進捗確認と、スケジュールの修正を行う日であると認識しておきましょう。
学習スケジュールの作成
全体スケジュールの作成が終わったら、最もウェイトがある学習スケジュールを建てます。
【2】タスクの抽出「WBS」
学習に際しては、人それぞれ進め方が違うとは思いますが、全体スケジュールで行った調査をもとに、「使用するテキスト」を決め、そのテキストに沿った学習スケジュールを立てます。
「証券外務員2種」は暗記中心の勉強になるということが資格の調査で分かったため、ネット検索の結果、以下のテキストで勉強することとしました。
これらをもとに、勉強項目を抽出したものが以下の通りです。
テスト前には一度模擬的なテストを行う必要があるため、「プレテスト」を予定に組み込んでいます。期間にもよりますが、勉強系の場合は特定期間のうちに行う“ノルマ”という形で計画を立てることがいいでしょう。
1日単位で分けてもいいですが、そうなると「ワークパッケージ」の数が膨大となり、進捗管理が大変になります。
所要時間見積もり
勉強計画に関しては、この所用期間の見積もりがネックとなってきます。「学習スケジュール」計画時に抽出したタスクは「勉強分野」となっています。ですので、分野が広ければ当然学習期間は長くなりますし、自分にとって得意なのか苦手なのかでも所要時間が変わってきます。
また、土日に多く勉強できる時間がある人もいれば、平日からコンスタントに同じ時間で勉強したい人もいるでしょう。こういった個々の状況を含んで「算出」するのは骨が折れるので、ある程度自分にあった学習時間を決めることとしてください。
そして、ガントチャートを実際に作成した後に、「無理がないか?」「甘くないか?」といったところを確認・修正することが必要となります。
実際に抽出した「学習スケジュール」の「WBS」は以下のとおり。
今回のWBSでは、レベル2に「学習範囲」というものを持ってきています。
ここを飛ばして、いきなりレベル2に学習項目を持ってきてもいいのですが、例えば途中で別のテキストも勉強するといった変更が入った場合に、ワークパッケージの数が膨大になってしまうため、後々のことを考えて敢えて分割しています。
【3】ネットワーク図の作成
今回の「学習スケジュール」に関しては、ネットワーク図は特に作成しなくてもOKです。それぞれの項目が基本的に独立しており、「暗記系」の勉強なので、特に前後関係にルールはいらないと判断しています。
これが、学校の試験や受験といったものである場合、ある程度勉強順番のカリキュラムが組まれていますので、「終了→開始」といった依存関係が発生する項目もあるでしょう。その場合は、ネットワーク図を作成し、全体の勉強の流れを把握することも必要になってきます。
【4】ガントチャートの作成
【2】WBSの構築〜【3】ネットワーク図/CPMから作成したガントチャートが以下になります。
学習スケジュールに関しては、クリティカルパスの把握は特に必要ありません。
勉強実施のタスク自体が、「資格取得」プロジェクトの「全体スケジュール」の中でクリティカルタスクとなっていますので、進捗管理を徹底して遅れがある場合はすぐに修正を行う必要があります。
「🔻」のマイルストーンは進捗管理の日を表しています。
特に「学習スケジュール」は遅れが致命傷になるので、進捗管理が重要となってきます。また、ガントチャートの下の方の期間計算結果で、余裕時間を確保していることがわかります。
計画段階で余裕時間を残しておくことで、2つのメリットがあります。
スケジュール遅れに余裕時間を割り当てられる
「勉強系」のプロジェクトの場合、自分の力で何とかしなければならないタスクがどうしても多くなります。その場合、進捗管理のときに説明した「クラッシング(コストを掛けて解決する)」という、修正方法が基本的には使用できません。
したがって、どうしても「ファスト・トラッキング」か、「余裕を割り当てる」しか対応策が無くなってくるわけです。
残った余裕時間で最後の復習ができる
想像しやすいメリットと思いますが、ギリギリまで勉強をしていると、最後のほうは「一夜漬け」になる場合が多くなります。
ですので、スケジュールには必ず余裕時間(フロート)を組み入れるようにしておきましょう。
進捗管理について
実施例では具体的な進捗管理は行いませんが、「勉強系」プロジェクトで最も重要なのが、進捗確認とスケジュール修正です。
「勉強」が必要なプロジェクトなので、進捗が遅れるほどに目的である「合格」を果たすためのリスクが高くなります。よく言うところの「一夜漬け」を行う確率が上がっていくということです。
したがって、「勉強系プロジェクト」の場合には、最低でも「1週間に1回」の進捗確認を行う必要があり、その際に、学習計画を見直し・修正する必要があります。
また、スケジュールを修正する際にも、以前のスケジュールは記録として残しておきましょう。今後の同様のプロジェクトスケジュールを計画する際に目安となりますし、自分の予定が遅れていく状況を把握することができ、自らの行動傾向を見直す助けにもなります。
まとめ
今回はガントチャートの作成例として「資格取得」について紹介しました。
ガントチャートは最初は作成するのに苦労しますが、作成を重ねることで慣れていきますし、一度作成したチャートを次に作成する場合のベースとすることもできます。
まずは、個人レベルでの短期間の簡単なプロジェクトで作成を行ってみて、作成の流れを体感していきましょう。